束の間の休息感を吹っ飛ばすような依頼が舞い込んだ。
さほど納期がなく、図面を見ると、いかにも手間がかかりそう。
見積もりを提出したが、まるで予算が合わないらしい。

出来るだけ全体のイメージを崩さずに、使用材料を見直して、作図。


新たに見積書を添えて提出。
予算的にはオーバーしていたようだが、オーナーさんが頑張ってくれて、制作開始の運びとなる。

当初、大工さんが制作すると思っていた外部ファザード部分の飾り壁。
直撃は無いものの、多少の雨に濡らされ、日に照らされ、風にもさらされる。
素材選びがキーポイント。
木そのものの腰が弱く、癖が少ない"ヒバ材"を使用することに。
頑丈なだけがすべてじゃない。
腰が強すぎると、曲りが出たときに取り付け部分がめくれ上がってしまう。
経験を頼りに、木が持っている特性を考慮した。



取り付けの時期にも苦戦した。
塗装を開始する日は、工程で決まっている。
いくら製材して成形した木材でも、湿気は吸うし、逆に水分が抜けることもある。
塗装の被膜は、それらを大幅に軽減するので、取り付け後、即効の塗装が望ましい。
ネットの天気予報とにらめっこしながら、日和の安定する時期を選択。
一気に組み上げる。

屋外ファザードと統一感を持たせた室内什器。
厄介だったのが受付カウンター。
変形で、裏側は引出しだらけ。
収納物も、ある程度決まっているので、内部有効寸法は厳守。

表側は、サンメントという成形品を使用。
シナトノ相性も良く、塗装前でも結構な出来栄え。


カットミラーも、統一のデザイン。
半完成品状態で輸送し、現場にて組み上げる。
美容室什器にはコンセントは必須アイテム。
おまけにコンピュータのRAN配線も絡んでくるので、制作時に見えないところでスペースを作るが、意外と難関。


塗装が施される。
当初、青い部分は、もっと明るくて鮮やかだった。
正直「なんて色を使うんだ」と半分残念に思ったが、塗装屋さんが終わった後に、エイジング塗装の専門業者が手作業で色を調整していく。


このエイジング塗装を担当した業者さん、実は塗装屋さんではなく、看板屋さん。
私の高校卒業後に就職した業界の人だった。
次回は一度この塗装にも挑戦してみたい。


一度目のエイジング終了後は、まるでユニバーサルスタジオジャパンの風体だった。
なんとも遊び心があって、それでいて渋くてかっこいい。
(まだミラーは貼られていません)


難関だった2階の親子カットスペース
ここで問題なのが鏡のサイズ。
親子ならんでカットができるようにしたいらしいのだが、隣のキッズスペースで、子供を遊ばせ、大人だけでカットすることもある。
出来るだけ鏡は一枚で行きたいらしいのだが、はたして2階のカットルームまで搬入できるのか?


本体は、ほとんどバラバラ状態なので、搬入に問題なし。
ガラス屋さんと何度も鏡の原寸を想定しての搬入シュミレーションの後、無事に施工。
なかなかの妙技でした。


しかし鏡を施工すると、一気に爽快な見栄えになる。
現場監督と「かっこいいなぁ」と思わず驚嘆。


シャンプースペースの収納棚です。
ここはシャンプーやトリートメントなどの薬剤?関係の収納も必要なので、メラミン化粧合板で仕上げています。
間接照明が家具を浮き立たせて、神秘的な感じですね。


壁面埋め込み飾り棚です。
ネイルスペースの飾り棚ですが、結構簡単な物の割には、何とも収まりがいいですね。


これも壁面埋め込み式飾り棚。
パネル状で搬入して、現場で組み上げました。


ネイルスペースの収納カウンター。
爪の粉が結構舞うらしく、白を基調としたデザインになってます。


2階シャンプースペースの壁面収納です。


2階シャンプースペースの壁面収納です。


受付カウンターです。


受付カウンター後部壁面埋め込み収納です。


入り口後部ノロッカーです。
写真には付いていませんが、カギ付きで、キーホルダーが、またカッコいい。


外部ガラス面収納棚です。


待合スペースカウンターです。
足元をスッキリと収めるために知恵を絞りました。
照明器具ノ配置と言い、椅子のレイアウトと言い、担当のデザイナーのセンスは流石だと感心しました。

制作後記
これだけの気合が入る仕事は、滅多にありません。
しかしながら、このオワゾーブルさんの店舗は、以前、岸和田店でも施工させていただき、その時も、かなり気合が入っていたのを覚えています。
遊び心があり、それでいて、シックに落ち着いた仕上がりになっているのは、オーナー様とデザイナーの息が合っているのでしょう。
こんな仕事を手掛けたときに、この仕事をしていて良かったと心底思えます。